カランダッシュ「ネオパステル」レビュー|セヌリエとの違いと、作品『凍結に咲く』で試みた透明感

カランダッシュ ネオパステル 96色セットのパッケージ カランダッシュ

ドローイング作品『凍結に咲く』(2023年 / oil pastel on paper)では、スイスの名門画材メーカー・カランダッシュの高級オイルパステル「ネオパステル(NEOPASTEL)」を使用しています。

Amazon.co.jp: CARAN D'ACHE カランダッシュ パステル 油性 ネオパステル 7400-396 96色 紙箱 正規輸入品 : ホビー
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スイスには、世界最高峰の品質を誇る描画材を生み出し続けている会社があります。カランダッシュ(Caran d’Ache)はその筆頭です。

カランダッシュのネオパステルで描かれたドローイング作品「凍結に咲く」

凍結に咲く
2023
oil pastel on paper
42×29.7cm

[作品『凍結に咲く』の詳細・購入ページはこちら(Artists 倉庫)]

実はこのネオパステルに辿り着くまでには、かなり頭を悩ませました。候補として並んでいたフランス・セヌリエ(Sennelier)のオイルパステルとどちらを選ぶべきか、画材店で随分と迷ったのです。どちらもプロユースの高級品ですから、簡単に買い直せる金額ではありません。

今回は、私がなぜセヌリエではなくカランダッシュを選んだのか、その描き心地の違いや保存性について、実際の制作体験をもとにレポートします。

セヌリエとカランダッシュ、迷った末の選択

最初は、セヌリエのオイルパステルを数本だけバラで試し買いしてみました。

使ってみた率直な感想は、「あまりにも濃厚で柔らかい」ということでした。セヌリエはピカソの要望で作られた歴史がある通り、まるで油絵具の塊をそのままキャンバスに押し当てているようなクリーミーさを持っています。しかし、私自身の表現の核は「線描」にあります。セヌリエの極度の柔らかさでは、輪郭やシャープな線が潰れてしまい、私の求める線描を立ち上げるのが難しいと感じました。

(※今振り返れば、塗った層を削り出す「スクラッチ技法」なら面白かったかもしれないという想いもあり、今後また試してみたい画材ではあります)

そこで、線描のコントロールを求めて購入したのが、カランダッシュの「ネオパステル」でした。

ネオパステルがもたらした「すりガラスのような透明感」

実際にネオパステルを紙に走らせてみて、最初に驚いたのはその独特の透明感でした。

セヌリエのような不透明で圧倒的な隠蔽力・濃厚な発色とは異なり、カランダッシュはまるで「すりガラス」を通して光を見ているような、静かで澄んだ色調が生まれます。オイル分だけでなくワックス(蜜蝋)成分の配合バランスが絶妙だからこそのテクスチャーだと感じました。

この透明感は、私にとって望外の幸運でした。拠点としている軽井沢の凍てつく空気、張りつめた氷や雪の静寂を描き出すのに、この澄んだトーンが驚くほど合致したのです。

もちろん、硬質なペンやニードルのような極細の線にはなりませんが、このネオパステルでしか引けない、少し丸みを帯びながらも芯のある線描は、画面に新しい息吹を与えてくれました。

【基礎知識】そもそも「パステル」にはどんな種類があるのか?

画材としてのパステルは、粉末状の顔料を接着剤(バインダー)で棒状に固めたものですが、バインダーの成分によって性格が全く異なります。大きく分けると以下の4タイプが存在します。

  • ソフトパステル(Soft Pastel)
    • バインダーにごく少量のトラガントゴムなどを使用。顔料の比率が最も高く、粉っぽくマットで鮮やかな発色が特徴。指や擦筆でぼかしやすい反面、定着力が弱いためフィキサチーフ(定着液)が必須です。
  • ハードパステル(Hard Pastel)
    • バインダーの比率を増やして硬く四角い形状に成形したもの。細い線やエッジを描きやすく、クロッキーや下描きによく用いられます(コンテに近い性格です)。
  • パンパステル(Pan Pastel)
    • 特殊な容器に入ったペースト状に近い微粒子パステル。専用のスポンジツールを使って絵の具のように広い面を塗ることができます。
  • オイルパステル(Oil Pastel)
    • 顔料に植物油や鉱物油、ワックス(蝋)を練り込んで固めたもの。クレヨンよりも柔らかく、顔料濃度が高いのが特徴です。水には溶けず、油彩に近い重厚感や光沢感を持っています。

今回ご紹介しているカランダッシュのネオパステルは、この中の「オイルパステル」に分類されます。

スイスのクラフトマンシップと画材の歴史

ロベール・ドローネーのような抽象絵画の巨匠たちが歴史にその名を刻んできた背景には、彼らの尖ったビジョンを受け止め、表現を可能にしたこうした画材メーカーの誠実な技術力があってこそだと実感します。いつかスイスのジュネーブを訪れた際には、懐事情など一切気にせず、カランダッシュの画材をトランクいっぱいに詰め込んで帰国するのが私の夢の一つです。

保存性と定着について:ベタつきとフィキサチーフの有無

セヌリエのオイルパステルが「いつまでも乾かない生湿状態」を保ち続けるのに対し、カランダッシュのネオパステルは表面が適度に落ち着き、そこまで過度なベタつきを残しません。

私自身の現在の管理方法としては、作品の上にパラフィン紙(グラシン紙)を1枚当てて保管・額装するスタイルを取っており、今のところスプレー式のフィキサチーフ(定着剤)は使用していません。

ただ、長野・軽井沢という冷涼な高地環境で制作・保管しているため、「気温や湿度が高い地域・夏場の環境下で、油分や蜜蝋がどのように経年変化するのか」 についてはまだ十分な検証ができていません。

もし温かい地域にお住まいの方で、ネオパステルを長年使われている作家さんや愛好家の方がいらっしゃいましたら、ぜひ下のコメント欄で保存状態や取り扱いの体験談を教えていただけるととても嬉しいです!

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